私はゆっくり起き上がり、仁の方に体を向ける。



「なんだ、起きてたのか。寝てると思って言ったのに。」



「んん~!」



「ハハッうそうそ。」


ほんと、仁はずるい。そうやって、いつも簡単に私の機嫌を直しちゃう。


魔法使いもビックリだよ。


「その唇。」


私は仁の唇に人差し指で触れた。



「百万回洗わないともうキスしない!」



「……。」


わかるよね、これが私からの気持ちだよ。


私も少し大人気なかったしね。



すると仁は、ゆっくり私の人差し指を掴む。


「そんな面倒臭ぇマネしてられるかぁ~!」


「きゃあっ!」



そのまま後ろへ押し倒された。



“ドンッ!”



「……。」


「……。」


真近で見る、大好きな仁の顔。


よかった、ちゃんと戻って来てくれて。



「それより一発で消毒できるんだったらその方がよくね?」



消毒って、何気に柏木さくらに失礼だしっ。



でもちょっとうれしい。



もちろんその後、仁は私と何度も何度もキスをした。



あの“営業スマイル”ならぬ、“営業キス”を無かった事にするかのように。