「そんなにひどかった?」


「ひどいなんてもんじゃねぇよ、大声で俺の名前叫ぶし泣き出すし。よくあれで、バレなかったもんだ。」


「面目ない……。」



返す言葉も見つからない。


「でも……」



カタンッと一気に飲み干したビールの缶をテーブルに置いた。



「あれは、お前の本音だったん……っだよな。」



えっ……。



「つぅか、薄々気付いてはいたけど。そんな風に思ってるだろうなってのは。」



膝の上で飲みかけのグラスを持つ手が震えた。



恥ずかしくて……


仁は何でもお見通しなんだなって。



すると仁は急に立ち上がりググッと伸びをした。


「あぁ、俺今度連休とるつもりだから。」



「へっ!?」



「お前も有給休暇もらえ。」


「えっ!?なんで?何すんの!?」



パーカーのポケットに両手を突っ込んで少し恥ずかしそうに目を合わせない。



「まぁたまには、旅行でも行くかな……とか思って。」



「えっ?」



「お忍びで行けそうなトコがあれば、だけどな。」



そう言い残してそばにいたタマを抱き上げると仁は寝室に消えて行った。



りょっ旅行?



行けるの??



まだ放心状態の私。



だって事務所との約束で出掛けたり出来ないはずだし。



でもきっと仁は、私の本音を聞いてから必死に何かしてやれる事はないかって考えてくれたんだよね。



なんだか、温かい気持ちが胸いっぱいに広がった。


ありがとね、仁。