キミのとなり。

私の代わりに着信を確認した後、その電話に出て何やら話している若菜ちゃんの様子をぼんやりと見ていた。



その着信はタイミングよく、仁からだったようだ。



「あっもしもし!」



若菜ちゃんは何やら挨拶をした後、チラチラと私を見ながら仁に事情を説明しているようだった。



「すみませんけど迎えに来ていただけません?」



若菜ちゃんはそう言ってお店の詳しい場所を説明して電話を切った。



電話を切って数十分後--


ガランガランッ



まだなんとか意識のある私の目に、店の入口からニット帽を目深に被りサングラスをした仁が入って来たのが見えた気がした。



仁はゆっくり店を見渡し酔い潰れて眠る私を見つけた。



「あっ!こっちこっち」



私の横で若菜ちゃんが手で合図を送ると仁はテーブルにうずくまる私の元へやってきてゆっくり肩に手を置いた。



「おい!」



「……。」



私はゆっくり顔を見上げる。



曇り硝子越しに誰かを見ている……、そんな感じだった。



だけどそれでも私の体はいとも簡単に仁の声を認識する。



「あっヤッホー仁!」



「ったく!帰っぞ!」



その声に答えようとするのに私の体はまったく言う事を聞かない。


まるで、違う誰かに体を乗っ取られたみたいだった。


呆れて私の顔を覗き込んだ仁の動きが一瞬止まる。



あとで聞くと、この時私は涙を流して眠っていたらしい。



そして積もりに積もったストレスを発散しだした。