キミのとなり。

「なんで急にこっちに?」


私のその質問に、パスタを巻き付けたフォークを持つ手が一瞬止まる。



そして少しはにかんでこう言った。



「別れちゃいました、彼氏と。」



「…え」



彼女は極めて平然と事のいきさつを話し出す。



「なんか同棲始めてからもう1年以上も経つのに結婚の“け”の字も出てこないし。」



「どう考えてるのか聞いたら、全然そんな気ないって言われちゃって。」


俯きながらそう話す若菜ちゃん。



「だったらもういいやっ!ってこっちから別れ切り出しちゃいました。」



「えっ……そうなの?」



「どっかで期待してたんですよねー引き止めてくれるって。賭けだったんです!」



「賭け?」



「出ていくって言えば思い直して結婚考えてくれるんじゃないかって。」



「…………。」



「でも全然期待外れ!」



少し寂しそうに笑う。



「だからもういいやって!自棄になって飛び出してこっち戻って来たんですけど。」



「戻ったものの住むとこないし、お金ないし、仕事ないし……(チュルチュルチュル…)んん!おいひぃ~。」



昔と同じように幸せそうにペペロンチーノを頬張る。



空元気なのが伝わってくるよ。



「……っでうちの会社でバイト始めたの!?」




「そうなんです!たまたま売店の販売員募集のチラシ見て!」



「別にバイトなら他にもあったでしょーなんでまたうちで……。」



「だってぇ!また先輩にも会えるしぃ働きなれてる所の方がいいし!」



超ポジティブな彼女はあっさりそう答えた。