勤務を終え、おなじみの忍者走りでマンションに戻るといつものようにタマが私を迎えてくれた。



「まだ帰ってないか……」


今日は特別不安だなぁ…。



今頃、あの女優と一緒にいるのかな。



タマを胸に抱きソファーにへたばる。



『ニャャア~』



甘えた声でタマが私を見ている。



「タマァ…私の気持ちわかってくれる?」



『ミャア……?』



「そっかそっか。お前はわかってくれるか~」



私があごの辺りを撫でると気持ち良さそうに目を細めてじっとしている。



「なんかさぁ……不安なんだよねーまさか仁に限って浮気とかはないとは思うんだけど……だってあの女優さんお人形さんみたいにかわいいんだもん。顔だって握りこぶしぐらいの大きさしかないし足なんてカモシカ並に細いんだよ!?あんなのに誘惑されていかない男なんていないよねぇ。」


『…………』



あれ……?



私の長話に飽きたのかタマは膝の上ですっかり熟睡していた。



「何だよ何だよ連れないなぁ~。」



「誰と話してんだよ。」



ビクッ!!



背後から声がして振り返るとリビングの入口に仁が立っていた。


「びっびっくりしたぁ!」


「それはこっちのセリフだよ。何ブツブツ言ってんだ。気持ち悪りぃ。」



そう言って私の前を通り過ぎる。



「ちっ違うよ!タマと話してたの!」



ニット帽とジャケットを脱いでちらっと私に目をやる。



「頭大丈夫か?」



私はムッとして負けじとイヤミを言ってみる。