「あいつ……、仁とはもう会えないんだ。今までもほとんど会ってなかったけど……もっと遠くへ行っちゃって。たぶんもう、しばらくは会えない。」


弘人は遠い空を見つめ、私の話しを聞いている。


「でも、待ってたいんだよね。あいつが帰って来たって私の事、想ってくれてる保障なんてないんだけど……でも、待ってたい。」


「……。」


「弘人の事もなんで許せたのか、ずっと考えてた。正直、あの時は絶望して二度と顔も見たくないと思ってたんだ。」


弘人は私から目を反らす。


「それが、なんでここまで普通に接する事ができるようになったんだろうって……。昨日わかった。別に、自棄になってた訳でも時間が解決してくれた訳でもないんだ……私が弘人の事、もうなんとも思ってないからなんだよね。もう、仁しか見えてないから……そう思った。」


弘人は震えるまぶたを閉じて深く溜息をつく。


手に握りし締めたプレゼントが小刻みに震えている。


だけど、はっきりしなきゃいけない事だったから。


これでいいんだ……。


“もしかしたら”なんて曖昧な気持ちのまま、弘人と接して行くわけにはいかない。


私の“ケジメ”だった。



――その後、弘人は小さな声で「わかった」と言った。


空を見上げたまま、立ち尽くす弘人を置いて私はその場を去った。


自分でも驚いている。


昔の私ならあんなに言いにくいことをハッキリ言えなかっただろう。


きっとこれも“仁効果”なのだ。


あいつが私を強くしてくれたんだ。