「……言葉だけを」


「え?」


「仁さんが言った言葉だけを見るんじゃなくて、その裏に隠された本当の気持ちに気付いてあげないといけないような気がする…。」


真顔でそう話す晶子。


「裏に隠された気持ち?」


「わかんないけど、きっと何かあるんだよ!」


晶子は急に立ち上がりこう言った。


「ちょっとあたしに任せてみてよ!」


「えっ……」


そう言うと晶子は部屋を出ようとした。


ちょうどそこに晃が帰って来た。


「あれ!?晶子どこ行くっ……」


「行くよ!」


「えっ!?なんで?ジュースもほらっ…」



晶子は晃の手を引っ張ってどこかへ向かった。


裏に隠された気持ちなんて


……あるのかな。


翌朝――


出勤途中に立ち寄ったコンビニで晃を見かけた。


「晃」


「おう!千秋。」


「昨日あれからどうしたの?」


「昨日?あぁ、なんかよくわかんねぇけど晶子の奴、仁さんに話しがあるとか言うから携帯に電話してみたんだ。で、昨日一人で会いに行ったみたいだぜ。」


「ひっ一人で行ったの?!」


「ついて行くって言ったんだけどさぁー。一人で行くって聞かなくて。」


「そう……。」


晶子からなんの連絡もないなぁ。


会社に着くと、いつも背後から近寄ってくる若菜ちゃんの気配がない。


今日休みだっけ……?と思いながらオフィスに入ると、私の目の前のデスクでパソコンに向かいながら虚ろな表情を浮かべる若菜ちゃんがいた。


なんだ、いるんじゃん。


でもなんだかいつもと違う。


様子のおかしい若菜ちゃんを気にしつつ、デスクに着く。


「はぁ~……」


すると、若菜ちゃんが深く溜息をついた。


「ぉはよ…。」


私が軽く手を振ると途端に泣きそうな顔になる。


えっ…!


「どっどした!?」


私は、今にも泣き崩れそうな若菜ちゃんを給湯室へ連れて行った。