何にも話さないままどれぐらい時間が過ぎたんだろう。


「ねぇ仁。」



体を起こして仁の顔を覗き込むと、仁は静かに寝息をたてて眠っていた。


相当疲れてたんだな。


私は仁の体を静かに横に寝かせ毛布をかけた。


死んだように眠る仁……。


これが仁の夢だったのかな。


こんなに大変な思いをしてでも叶えたいものなの?


私には正直わからない。


小さなライブハウス唄っていた時の方が、生き生きとして仁らしかったような気がして……。

そんな風に考えたらダメだよね。


支えてくれって言ってくれたのにね。


なんだかカーペットに丸くなって眠る仁が小さく見えた。


夕方になって突然、仁の携帯が鳴った。


仁はその音に跳び起きて、慌ててポケットから携帯を取り出した。


半分眠りかかっていた私もびっくりして目を覚ます。


「……はい。」


少し寝ぼけた声で電話にでる仁。


「…はい、はい。」


また仕事かな。


「わかりました。」


“ピッ”


電話を切るなり溜息をつく。


「仕事?」


「……わりぃ。」


「はぁ~。」


あっ!!


しまった!


思いっきり残念な顔をしてしまった。


それを見て仁は下を向いて頭をグシャグシャと掻きむしる。


「あっ…いやっ、平気だよ?あっすぐ行くの?」


私は動揺をごまかすように立ち上がった。


下手くそな演技。


「あっなんか食べてく!?ってか、そんな時間ないかっ!ハハッ。」


もうしゃべんない方がいい。