数日後の夜8時――


メールを受信した。


“仁” からだった。


もう3日も帰ってない。


テレビの収録やら雑誌のインタビュー、レコーディングと大忙しだったようだ。


《明日休み 会える?》



ヤッター!!


それは久々のデートの誘いだった。


《私も休みだよ!どこ行く!?》


メールを送信して5分後―


返事がきた。


《考えといて!帰ったら連絡する》


たった一行の文面だけど、仁と繋がっている事が嬉しくてずっと携帯を握りしめていた。


あまりに興奮し過ぎて結局一睡もしないまま次の日を迎えた。


昼過ぎになって部屋のチャイムが鳴る。


ドアを空けるとそこにはニット帽を深く被った仁が立っていた。


「ビッビックリした……。」


「ただいま。」


不精髭を生やし、疲れ切った表情の仁。


なんだかどこにも行かずただ一緒にいたくなった。


「上がって。」


「……え?」


私は仁の腕を引っ張った。


「どっか行かないのか?」


「……いい。」


「でも次いつ休みとれるか……」


「いい、上がって?」


腕を離さない私を見て仁は困惑気味に中へ入った。


「なんかあったか?」


首を横に振った。


ただそばに居たかった、それだけ。


こんなに疲れ切った体でも私に会いに来てくれる。


どこにも行けなくてもいい、ここで一緒に過ごしたい。


私は黙って仁の横に座り込んだ。


「疲れた?」


私がそう聞くと仁は帽子を脱ぎ、髪をボサッと崩しながら答えた。


「……ちょっと。」


「なんか痩せたね。」


そう言った私にフッと苦笑いを浮かべる。


私は思わず仁に抱き着いた。


“ギュッ”


「……ん?」


「好きだよ。」


やっと言えた。


言おうとしたわけじゃなくて、自然と出て来たんだ。


すると仁は私の肩を抱きしめてくれた。


このまま時間が止まればいいのに……