「呉羽、まだ?」

「ちょっ・・・待って・・・」

「もう待てないんだけど。」

「あともう少しだけ待って・・・」

「─あーもうっ、いっつも呉羽はこうなんだから!!」

──バンッ

隣のデスクで苛立たしげに声を荒げるあたしの親友。

「そう怒んないの。」

「そっちが怒らしてんでしょ。」

「・・・そっか、ごめん。」

あーぁ、今日もまた定時にあがれなかった・・・

浜崎呉羽(はまさきくれは)、23歳独身。

今日もまた親友の上原心菜(うえはらここな)の地雷を踏んだようです。

「どーしていつもいつも仕事サボるの!?」

「あたしが自分から進んでサボってるわけじゃない!!」

そう、まさにそうなのである。

あたしが定時にあがれない理由は、大体・・・


『浜崎さん、ちょっといいかな・・・?』

『今日のお昼休み、屋上で待ってる』


告白。

いい大人が仕事の合間に女にうつつ抜かすなっての!

それにあたしみたいな人間のどこがいいんだか・・・

みんな決まって、


『一目惚れ』


というワードを口に出す。

あたしに一目惚れだと!?

そんなお世辞言ったってあたしは付き合わないっつの!