「お母さん、蘭、いたよ!!」
お母さんは何も言わずに、ただ小さく
何度も何度も頷いた。


「きっと、きっと良くなるわ」
お母さんの諦めに似たような声がしたのは、気のせい?


――蘭、死んじゃヤダ!

その時確かに蘭の指が、動いたんだ。
お母さんはそんなの見えるはずないって言ってたけど、絶対に動いた。


「宮崎蘭くんのお母さんですか?」
主治医の声だった。
「はい」
「お話があるんです」
「あの、この子は・・・?」
「姉弟ですか?」
「はい」
「お姉ちゃん、後悔しないなら聞いてもいいよ。どうする?」

後悔・・・。あたしは、そんなものしない。
蘭のことなら、全部知りたい!
「聞きたい!」
「では、こちらへ」


あたしとお母さんは、先生の後を追って、部屋に入った。

「蘭くんの容態は、あまりよくありません」
「!!」
お母さんの反応が濁る。
――あぁ、悪いことなんだな。


だけど、次の言葉にあたしも絶望するんだ・・・。

「蘭くんは記憶の1部を失っています。
 その1部とは、お姉ちゃんの、杏ちゃんのことです」

「え・・・?」