「・・・ん。杏、起きて」
「ん・・・着いた?」
「うん」

時間を確認すると、まだ30分あった。
ちょっと散歩してくる、とお母さんに言って、あたしは蘭の姿を探した。


――蘭、いないかなぁ・・・。

蘭はおばあちゃんと暮らしてた。
だから、ここにいないとおかしいんだ。


でも・・・見つからない。
仕方がない、戻ろう。


お葬式に出たのは、30人弱だった。

これは、双子の本能なのだろうか?
それとも、女の勘なのか。

あたしは、前の方に座ってる蘭を見つけた。


お葬式が終わると、あたしは蘭の方へ駈け出した。
あぁ、蘭と話せる!

でも、あたしの期待はこの1言で崩れた。

「誰?あんた?」


分かってる。
分かってる。

蘭があたしのことだけ忘れてることは、
分かってる。


忘れたことなんか1度もない、11年前の出来事。