冷めた瞳に、やるせない孤独が光る。


小さな背丈からは想像もつかないほどに大人びた眼差しをする少女は、面倒くさそうに短く答えた。



「明日には持ってきます」


それきり会話を拒絶するように背を向けた涼に、若い担任は、罵倒するように捨てゼリフを投げつけた。


「やる気がないなら、学校なんてやめちまえ!」


一斉にシン、となる教室。


好奇の眼差しを容赦なく浴びせかける同級生たち。


中には、「またかよ」と声を漏らす生徒もいた。


だが、それが何だと言うのだろう。


どんな人間も、涼の目の前を遮ることはできない。どんな言葉も、彼女を引き止めることはできない。


なぜなら、空は変わらず青く、温かい木漏れ日は、どんな人間の上にも平等に降り注ぐからだ。


色分けで区別する人間を小馬鹿にするように、そんなことにばかりやっきになる生命体を哀れむように、自然はすべての人間に平等だからだ。

雲の流れも緩やかな、季節は春。


涼しい風は涼の背を後押しするように優しく吹き、そして廊下の窓から差し込む柔らかな光に、涼は眩しそうに瞳を細めた。


こうして、青蘭中学一の問題児と名高い少女は、何事もなかったような顔でスタスタと歩いていく。


今日も押し殺したたくさんの溜息を、空っぽの鞄につめ込んで。