「なんだよー」


練習を終えて駅に向かう途中、数人の他校の生徒に取り囲まれて、真斗は嫌そうな顔をする。


「こんな人けの無い場所に男と一緒なんて、変な噂が立っちゃうよね」


「黙れ!」


その顔には見覚えがある、と真斗は思う。


恐らく、自分が潰したどこかの選手だろう。


「見ろ」


袖を捲り上げて、少年が腕を上げた。


「お前のファウルが原因で故障した傷だ。見覚えぐらいあるだろう」


そこにあったのは、生々しい施術の痕。


日常生活には何の支障も無いが、プレイヤーとしては致命的な傷を負わされた彼の顔には、収まりのつかない怒りと悔しさが表れていた。


「もう二度とバスケはできないと言われた」


少年の声が、悲しげに響く。


「何もかも失った。高校の推薦も、夢も。この腕のせいで、全部なくなった。お前のせいだ」


後ろに付き添っていたのは、彼の友人たちだろうか。


彼らですら、少年の苦しみを慮って切なげに眼を細めた。


しかし。


「ふーん」


真斗は低く笑う。


「お気の毒だったね、それは」


ちっとも罪悪感を感じていない真斗の口調に、誰もがカッと目をむいて彼を見つめる。


だが真斗は、口元に憎たらしい笑みを浮かべると、なおも意地の悪そうな顔で少年を斜めに見下ろした。


「でもさぁ、それっておれだけのせいかなぁ」


「どういう意味だ」


聞き返した少年に、真斗はニヤッと唇の端を上げる。


「だってさぁ」


全部失くしちゃったのは、あんたが弱かったからでショ―――――。