涼に一瞥されて、背後に控えるように立っていた少女は、痛いぐらいに姿勢を正した。


「おい、後輩脅すなよ」


ご苦労さん、と労いの声をかけられると、少女は即座に踵を返す。


涼がいるときは周りに近づかないというのが、少女たちの中で暗黙のルールになっている。


「那智」


「あーうるせーな」


面倒くさそうに言って、那智は闇に映える金色の髪をかき上げた。


「お前を引き込もうなんて、今さら思っちゃいねーよ」


新宿・歌舞伎町―――――。


様々な誘惑と、堕落した匂いがそこら中にひしめく夜の街に、涼が初めて足を踏み入れたのは、十三の誕生日を目前に控えた頃のことだった。