まるで、別人のようだと思う。


思い出の中にいる涼は、ニコニコと笑顔を絶やさない少女だった。


だが、澄んだ瞳は突き刺すような鋭い眼差しへと変わり、人懐っこい微笑みは、感情を映さないポーカーフェイスへと変貌を遂げていた。


思い返してみれば、中一の夏が終わった頃には、すでに素行不良のレッテルを貼られていたような気がする。


特定の人間の噂が科の違う頼知の耳に届くなど、広い青蘭では考えられないことであるにも関わらず、である。


頼知は、改めて考え込む。


小等部を卒業してから約半年の間に、彼女に一体何が起きたのか。


華のように鮮やかな笑みを失わせるほどの何が、彼女の身を襲ったのか。


そこまで考えて、頼知は未だに涼に囚われている自分を可笑しく思う。


昨日のことで、確かに過去の記憶とは決別したはずなのに、と。


―――――お節介ってのは、あながち間違いでもなさそうだぜ。


雨の日の翌日。


奇しくも同じクラスの和樹と頼知は、その日一日を、同じ少女のことを頭に思い浮かべたまま、晴れ晴れとしない気持ちで過ごすのだった。