そして、力なく吐息を漏らすと、心の中で思う。


本当は、謝りたかったのだと。


寂しそうに、諦めたように微笑む横顔を呼び止め、理由もなく敵意を向けたことを、ただ一言謝りたかったのだと。


きっと彼女は、何でもないことのように笑っただろうけれど。


降りつける冷たい雨は、しばらく止みそうもない。


解いた拳の指先に伝う銀色の雫を見つめながら、和樹は小さな声で呟いた。


「ごめんな……」


そう呟いた和樹の、仔猫を抱いていた胸の奥だけが、何だか熱かった。