雛の答えを俺は知っていた。


けれど、後から思い返し、やはり七海の冗談とか、俺を言いように動かす嘘ではないのか、とか。


そう、思っていた───




後ろの人々がやってきた電車に乗り込んでいく。


ざわざわ、と表現できる人々のざわめき。


雛の声は、停車しようとした電車の音にかき消されてしまった。


雛の顔が紅潮しているし、唇も動いていたから、雛の声を俺が聞き取れなかったのだろう。




「悪い、雛・・・聞き取れなかった」


「え?・・・ぁ、うん。そうだね。電車、来ちゃったもんね」


「あぁ・・・祐介待ってるから、もう一本後にしねぇとな」


「うん・・・」






「で、ごめん。雛は・・・誰が好きなんだ?」