「ベラトリス! 」
アーリャは抱きつかんばかりの勢いでベラトリスの前に現れました。
「あら、ご機嫌いかが?アーリャ」
「とんでもないわ!
あのあとすぐに嵐がきて、本当に後悔したのよ!
あぁ、それでも貴女が無事で本当に良かったわ」
アーリャは普段とは大違いで、非常に取り乱した様子です。
「それにしても…なんてことでしょう。
これほど酷い嵐は初めてだったわ。
貴女もさぞ恐ろしかったでしょう? 」
心配そうに顔を覗きこむアーリャに対して、ベラトリスはあっけらかんとしています。
明らかに今までと様子の変わったベラトリスを見てアーリャはひどく戸惑いました。
それでも言葉を続けます。
「なんて貴女は正しかったでしょう。
それなのに…あの素敵な家も素晴らしい品も全て失うなんて…。
実は、昨日一晩中あなたに電話をかけていたのよ。
でも途中で電話線が切れてしまって…」
「それはどうもご親切に 」
ベラトリスは浜辺へあがると服の裾をしぼってアーリャに向き直りました。
「でも実際そんな必要は無かったのよ。
もし心配がおありなら、ベーキングパウダーを入れたすすぎ水に油汚れの酷いものをつけるのが一番よ。
そうすれば、綺麗さっぱり汚れが落ちますもの!」
そう言ってベラトリスはお腹を抱えて笑い転げました。