嵐の日から(短編)

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何処からか鳥のさえずりが聞こえます。



駅には弱々しい陽の光が長い旅路を走る列車を照らしていました。




夜が明けたばかりの空の下、プラットホームには列車の扉を挟んで少年と少女が向かいあっていました。








ホームに立つ少女の長い睫毛には沢山の雫がついています。







少年は白い手でそっと少女の顔を包むと言いました。



『泣かないで…。
泣いても君は美しいけど、最後に素敵な笑顔をこの目に焼き付けておきたいんだ』





『だって…』



震える声で少女は答え、とめどなくこぼれる雫は白い頬を下っていきます。





少年は親指で涙をそっと拭き取り優しくまぶたに口付けました。






そこでやっと少女は微笑みを浮かべることができました。


しかし、二人を引き裂くように出発を知らせるベルが鳴り響きます。












『…ベラ、向こうに着いたら沢山手紙を書くよ』


『えぇ。楽しみにしているわ』








『……どれほど離れていようと会えない月日が重なろうとずっと君を愛している』




少年は強くベラトリスを抱きしめると言いました。





『だからこれから先、どんなに辛いことや悲しいことがあっても…

決して、

決して過去にすがって生きないで欲しい!




僕は…必ず返ってくるから 』









少年が身を引くと、ドアは閉まり列車はゆっくり動き始めます。







だんだんと小さくなる少年に向かって、ベラトリスは擦れる声で叫びました。




『ヴァーニャ!


私も愛しているわ!


ずっと、ずっとよ。

絶対に待っているから!』








泣き崩れる少女の姿はどんどん遠ざかっていきます。







少年には信じるしかありませんでした。
彼女は強く生きてくれるということを。








窓の外を見つめるアメジストの瞳が濡れていたのは気のせいではありませんでした。