おじさんが何か言ったとき、すでに私は反射でエレベータを確認していた。

おじさんが言葉を続ける。

「エレベータを見てくれないか?」

「動いてますよ、両方とも」

「…今から説明しようとしたのに、なぜエレベータの知識があるんだい?」

「違う飛行艇に…乗せてもらったことがあるので…」

「どこの?」

クロとは違ったテノールの通る声でお兄さんが横から訊ねる。

「さあ…」

クロのことなんて何も知らない。

私が戸惑いを隠せずにいると、おじさんが笑った。

「まあどこのでもいいじゃないか」

おじさんは飛行艇の速度を上げる。

ブゥーンと音をあげてエンジンが唸る。

風は流れるように裂けていった。