「クリュが倒れた」

その言葉を聞くや否や、私はクリュさんの部屋に向かって疾走していた。

さすがのクロも、その素早さに呆気にとられるほどだったらしいけど、
その時の私は、多分何も考えてなかったと思う。

ただ思い出していただけだ。

いつか、壁に左肘をつき、胸のど真ん中に拳を置き、かぶさり抱えるようにして立っていたクリュさんを。

"急に、な。初めてだ、こんなこと。もうおさまったから"

そう言ったクリュさんを。

「クリュさんっ!」

ノックもせず、ほぼ体当たりするように開けた扉の先には、
目をまん丸にしたウィンクルムさんとクリュさんがいた。

「びっくりした…何事だよ」