クロのあどけない笑顔は、怪我人へ心からの喜びを捧げている何よりの証拠だった。

「来い、オルビス」

クロは私たちに素早く背中を向け、歩きだす。

え、えっ…え!?
おおお別れっ!!?

「ちょ、ちょっと待って…」

「危ない!!!」

私が走りだそうとした瞬間、テラ・ドムスに響き渡ったアルトのかすれた叫び声。

開けっぱなしのドアの先に見えるクロはいきなり駆け出し、前を歩く元帥に体当たりする。

元帥が倒れこむのを、側近らしき3人の女性が支えた。

「クロ…?」

クロも倒れこむ。

クロは前に体当たりしたのに、倒れこむ方向は右。

青白い光沢のある灰色の鋼板の上に、真っ黒な服を着たクロが横たわる。