本当は焦ってるんだ。
長い付き合いで、いつの間にか一緒にいることが『当たり前』になった。
嬉しい反面、とても不安。


ねぇ、幸。
君は気付いてないでしょ?
どんどん綺麗になっていく君に向けられる視線に。

自分のことを評価しない君だけど、
君のことを見ている人は少なくないんだよ?

本当は閉じ込めてしまいたい。
誰の目にも触れないように。
幽閉される姫になってくれるなら、
オレは閻魔でも、魔王でも、クッパでも何にだってなるのに…。


―…あ、ヤバィ。相当頭イカレてる。


早く君を抱きしめたい。



手早くお風呂をすませ、
身体を冷やすために上半身は何も着ず、
頭を冷やすために片手には缶ビール。



リビングに戻ると幸はまだ画面の中の敵と戦いながら
「うーん…」と唸っていた。



「まだやってたの?」
と、ビールを開けながら話かけると



「だってー…うりゃぁ!」

どんだけ必死なんだよ。
思わず笑ってしまった。



そんな君が、可愛くて仕方ないんだ。



ビールを飲みながら
隣に座る幸に目を向ける。



「ねぇ、さっちゃん。」

「んー…?」


「結婚しようか。」


……あ、しまった。
勢いあまった。
焦る気持ちについ本音がポロリ。



「…」
「…」

案の定、幸は無言。


コントローラーはそのままに、
顔だけ俺に向けた。



「…なんだって?」


「結婚。しよか。」


雰囲気もへったくれもないけど、
ここまで来たら言うしかない。



「…なんで。」


…なんでって…我が姫は現実的。




『君を閉じ込めたいから』
なんて言えるはずもなく、
前から用意していた言葉を紡ぐ。


「俺ら、付き合ってもう4年になるし?
そろそろケジメ、付けようかなーと。
俺、もう25だし?」


「まだ25じゃん。私23だし。」


ほら、彼女は現実的。
まだまだ遊び足りないんだろうか。
でもね、もう離さないよ。
もう限界。



「さっちゃんに仲良い後輩出来て、子ども出来ても休みやすくなったしね。
調度いいんじゃな…」
「こ…コドモ?!」


「俺、25だし。そろそろ欲しいよね。」


「……マジ?」


「大マジ。」


コドモをだしに使うのは卑怯だと思ったけど、
ずっとほしかったんだ。
君と俺の証。
ずっと我慢してたけどね。

ねえ、幸。
オレがどれだけ我慢してるか分からないでしょう?
教えてあげる。


―……だから、
「結婚、する?」
首を傾げて改めて聞く。

君が首を傾げたこのポーズに弱いのを知ってるから。