「悔しいよ、俺は……っ!」



堰を切ったように、俺は話していた。
止めどない思いが溢れ出る。叫ぶ様にして、俺は鈴奈を勢いのままに壁に押し付けた。

惨めで情けない。何が学園のプリンスだよ。
俺はただの勇気のない凡人だ……。


「……俺さぁ、嫉妬したんだよ」
「…え?」


もうこうなったら全部全部ぶちまけてやろうと思った。この馬鹿には、そうまでしなきゃ伝わらない。情けない俺じゃないと、伝わらないんだ。



「お前がゴールした時。蓮に…抱き付いただろ。……馬鹿みたいだよな、マジで。最初は何とも思ってなかったのに、振り回されてる内にだんだん気になってて、挙句の果てには惚れてさ……そんで情けなく嫉妬して、ほんと、ほんと有り得ねえよ……ダサ過ぎ……」
「奏君……」


俺の、ありのままの胸の内だった。
ここまで曝け出すなんていつぶりだろう、と、ふと冷静にどこかで感じた。

それも、全部、こいつだからだ。


「全部…全部お前のせいだ」



そこからは、よく覚えてない。
思うがままに、欲望の限り鈴奈の唇を貪って、戸惑うこいつをよそにひたすら互いを交えた。


自分がどうしたいのか、なんて、まだ整理はついていないけど。
でもこいつから香る良い匂いとか、細くて白い手首とか、キスし終わった後の蕩けたような顔を見て俺は、心を、喋った。


「鈴奈……お前、もういいよ」
「…へ?」


戸惑った様な顔で見上げてくるものだから、もう一度キスしてやりたくなる。


「あいつらの彼女、やめろよ」


それを堪える様に、俺は目の前の愛しい人を強く抱き締めた。俺よりもひと回り小さくて、もっと強く抱きしめたら壊れてしまうんじゃないか、なんて思う。
鈴奈の心臓が俺にあるみたいに、どくどくと伝わってきた。



「俺だけの女になって」