急がなきゃ、急がなきゃ……


僕の『アリス』が、横取りされる前に……。


案内人の白兎は少し前にあった悲劇を思い出していた。

「やはりお前も『アリス』には成りきれなかったな。もう用無しだ」

そう言って奴は、彼女から全てを吸い尽くしていった。

記憶、知識、声、感覚……愛とゆう、感情すら全て……。

生きる人形になった彼女を、奴は玩具のように扱う。

でも、誰も逆らえない。

ただ1人を除いて。


「彼女を離せ」


絶対権力者に逆らった彼は、すべての役割を剥奪され、ただの傍観者と成り下がり、二度と『アリス』に会えないよう暗い暗い森の中に追放された。

そして奴は俺を指差し

「次の『アリス』を連れてこい。そうだな……アレがいい」