「……あの、里さん」
「…………なに」
「なんか、怒って」
「ない」
「……じゃあ」

――照れてます?

恐る恐る言ったその言葉に、里吉が一瞬、目を見開いた。
そしてまた、思いきり顔をしかめる。

その様子に、鳴海は吹き出した。

「んなわけ」
「あ……はは、そうなんだ」
「っせーな、」
「里さん、子供みたい」
「……鳴海のくせに」

生意気。
と、耳元で聞こえたと、思った。けれど、それは勘違いだった。

反射的に閉じた瞼が、かっか、熱い。
里吉の声が耳元ではなく、唇のすぐ先で聞こえたのだと、すでに冷静でない頭で気付いてしまったら、もう。

顔から火って出そうになるもんなのか、と、考えた。