「ほんとに?」 鳴海は、立ち止まった。 ソファを振り返ってはいけないような気がして、動けない。 今の、声。 背後で、衣擦れの音がした。 「鳴海。今の、本当?」 肩が跳ねる。 蛇に睨まれたカエル、のようだ。 実際は、目すら合っていないのだが。 すぐ後ろに人が近付く気配がして、ようやく鳴海は、自分の心臓が飛び出して来そうなほどに暴れていることに気が付いた。 同時に、自分がこれ以上ないというくらい、深く俯いていたことも。