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「ナルミ。最近、ずっとシズミのこと見てるわね」
「へ?」
唐突にそう言われて、思わずカレンを凝視してしまった。
イギリスへ来て、里吉の次に、友人と呼べるような立場になった人である。
出会ったのはカレンが先だが、鳴海が英語を習得するまで、まともに会話もできなかったせいだ。
「な……別にそんなこと、」
「ナルミ、シズミと同室よね? なにもないの?」
「えぇ……えぇぇ?」
なにもないと言い切れない、とは絶対に言う気はなかったが、鳴海は答えに困った。
そして、気付く。
今は、男であることを隠したりはしていないのだと、以前に里吉が言っていた。


