「はぁ……なんでこんなことに」
「あの、じゃあ」
里吉は、自分はわりと何事にも動じない方だと思っていた。
立場上、修羅場と呼べるような状況を何度も経験してきたし、女だと思っていた幼馴染みが実はただ異様に綺麗な男だったのだと知った時も、顔だけは平然と挨拶できた。
自分をオカマだと思って何の警戒心も持たずに接してくる美少女二人に対しても、何一つ悟られることなくいられた(この度の留学で作戦を間違えたと思った唯一の点だ。満面の笑顔で「あたしもここで寝ていいにょろ?」と言われた時はさすがにどうしようかと思った)。
しかし、いくらなんでもこれには動揺した。
「私、シャワー借りていいですか? 荷物運んだら汗かいちゃって」
そう言って何の躊躇いもなくボストンバッグから着替えを取り出し始めた鳴海に、里吉は思い切り背中を向けたのだった。


