「じゃあ、ちょっとここで待っててくれ。今すぐ郁を呼んでくるから!」



浩平君はすぐさま走り去ってしまった。




「あれ?響花?まだ学校にいたの?」




「あ、楓」




最近は郁のことで頭がいっぱいで楓にドキドキする余裕さえなくなっていた。


そのせいか普通に話せる。…なんか複雑な気分だ。




「今から俺と一緒に帰らない?」




「ごめん…今日はちょっと、まだ用事があるから…また明日」




前の私なら飛び上がって承諾しただろうに…

今はそんな気分じゃなかった。

せっかくの楓の誘いに私はなんて勿体ない事をしてしまっているんだろう…

絶対バチあたる。




「やっぱり。じゃあまた明日。…明日は響花にどうしても話したいことあるから、放課後は必ずあけといてくれる?」




…アレ?

今楓、“やっぱり”って言った?

何で私が断る事を知ってたんだろう?あ、もしかして素っ気ない態度とかになっ
てたのかな?


あわあわと慌てて、でも何をどうフォローしたら良いのか分からないまま頷くと



「ありがとう、じゃあまた明日」




そうして去って行く楓と入れ替わるようにして後ろから声が聞こえた。

…というよりバイバイぐらい私言えよ。




「おーい!響花ちゃん!
郁、連れてきたぜ!」





――…よし、気を取り直して頑張ろう。