「悪い。ちょっと雪音が呼んでるから、また今度な」




「「「「え〜〜!!神崎く――ん!!」」」」




神崎、とは郁の名字である。

郁の一言に女子の皆さんは不満の嵐。
だけどそんな叫び声を背に聞きながらも素知らぬ顔で女子の間をくぐり抜け、私達のもとへやってきた郁。



そう、郁はとにかくモテる。




これは今に始まった事ではなく、昔からだ。

何故なら、顔良し、性格良し、スポーツ良し、成績…そこそこ良しときたら誰だって振り向くだろう。


まぁ、私と雪音は例外だけどね。

いや、世の中皆が皆郁を好きになったら他の男性はどうなるんだって問題になるからね…って何考えてんだ私。



そんな事はどうでもよくてだな。




「珍しいな、響花が俺に相談なんて。

…最近あんま話してくれねぇから嫌われてるのかと思った」




何故かご機嫌な郁。

別に郁を嫌ってたわけではない。




「郁のことは好きだよ」




…だけどあんなに女子に囲まれてたら……ねぇ?



話しかけないんじゃなくて、話しかけられないんだよ。


だって郁、いつも女子達に囲まれてるし。