恋の施し



だけど、いくら問いただしても何でもねーよって言われてはぐらかされた。

雪音に相談しても気のせいだろうって言われた。


きっと雪音の事だ。郁のその表情には気付いてるはずなのに。


―――私には教えてくれない。



でも、そんな事が嫌なんじゃなくて私は気付けない自分が嫌なんだ。


郁はいつも私の変化に気づいてくれる。
私の足りない言葉でも理解してくれる。



だけど、私にはそれが出来ない。



そんな自分が嫌で惨めで情けなくて―――でも、2人が私に何も言わないから私はその事について追及する事を止めた。










「ここか…」



相田君の家は微妙に方向音痴な私でも辿り着けるぐらい高校から近かった。


うわぁ…緊張するなぁ…





ピンポーン





「……………はい」




いつもの爽やかな声とは程遠い苦しそうな声。





「あ、相田君!?私、望月(モチヅキ)響花!プリント届けに来たんだけど、開けてくれる?」





数秒後ガチャッと扉が空いた。





「……いらっしゃい」




そう言った彼はドアにもたれ、立つのも辛そうな状態だった。