私が郁に惚れたのは、運命だと思ったからだ。



父親の転勤と言う何ともありふれた理由で転校させられてしまった私。

一体コレで何度目か分かったものじゃない。
そしてやっとクラスに馴染めたかと思えば、また転校――その繰り返しだった。



だからもう、嫌気がさしてどうせまたいつか転校させられるならと誰とも関わらないようにしていた。


機械的に授業を受けてご飯を食べて休み時間を過ごして帰る。

ずっとそうやって次の転勤話まで過ごすつもりだったんだ。



相槌もそこそこ。
面白い話もしない。



そんな奴、誰も相手するはずがなかったのに。






「お前、もう少し誰かと話したら?」






そこで初めて隣の席に座る男子をまともに見た。

クラスの自己紹介も適当だった私は誰が隣になろうとも興味がなかったからだ。




でも、私は見て驚いた。





「お前、人の話聞いてんのか?」






顔立ちは誰もが振り返る程の、芸能人並のルックスをもった男の子だったからだ。