日が傾きかけている夕焼け空の帰り道。
私は1人でゆっくりとフラフラどこへ向かうでもなく歩いていた。
そして思い浮かぶのは、悔しいぐらいに彼の事ばかり。
強引なところも優しいところも、コロコロ変わる表情も私は全部好きだった。
もちろんそれは郁の言ったことと別の意味で。
私だけがそう想ってたんだと思うと何か寂しい。
本当にお互い私たちは長く一緒にいすぎたんだ。
ドン
「あ、すみません…」
そんなことを考えながら歩いていると知らない人にぶつかってしまった。
…しっかりしろ、自分。
もうコレ以上他人に迷惑をかけてどうするんだ。
たかが郁に振られただけ。
たかが自分の恋が成就しなかっただけ。
たかが郁と一緒に居られなくなるだけ。
―――――たった、それだけの事じゃないか。
私には雪音が居る。
家族も居る。
楓のような友達も居る。
郁がたった1人、私の世界から欠けたからと言って何だと言うんだ。
それをいつまでもズルズルと引っ張って…馬鹿だよ私。


