恋の施し



私達は家族のような絆で結ばれていて。

親も公認の仲だった。


だけど私は言ったんだ。いや、言ってしまったんだ。


郁が嫌いだって。


でも、今は仕方のない事を嘆いて悲しむよりも状況把握が大切だ。







私は急いで教室に戻る。
とりあえず楓に話を聞こうと思ったからだ。


だけど、教室のどこを見渡しても楓は居ない。





「ねぇ!皆、楓は!?」




とりあえず教室に居る人全員に聞こえるような大声で尋ねる。





「相田君なら保健室だよ」




「そっか。ありがとう!」



……どうしてそんなこと気づかなかったんだろう?

殴り合いなんて噂、すぐに広まるはずなのに…

というよりいつの間に2人はそんな事になったの!?




「ハァハァ…楓、いる!?」




保健室には2人いた。

先生は居らず、私のよく知る2人がいた。




「……俺もう帰る」




だけど私の姿を確認した瞬間、郁がすっと立ち上がってこちらの扉に向かってきた。




「ちょっと郁!ダメでしょ!きちんと手当てして!」




よく見ると郁は腕の包帯を半分しか巻いていなかった。
顔の消毒液のつけ方も中途半端な状態だ。


私は出て行こうとする彼を呼び止め、傷がない方の腕を引っ張る。