「……別れたけど…まだ未練があるんです…」
何故か敬語になってしまう私。落ち着け自分。
別に未練がましい女だって思ってもらっても構わない。
郁以外に事実を偽る気はないんだ。―――郁以外に偽る事ももう、出来ないんだ。
「だって私は――――…「だけど、」
それぐらい―――――…
続きの言葉を言う前に茨君が私のセリフを挟む。
私の手には少し汗が滲んでいる。
「アイツ、今日相田と殴り合ったって。
今相当荒れてるらしいぞ?この一週間良い噂も聞かない。
…それでもまだ好きなのか?」
「!
楓と!?……大丈夫かな…
ごめん!茨君!私用事できたから!」
郁はケンカ強いけど、温厚派の楓が心配だ。
彼は家まで殴り込みに行った実績がある。
今の郁は茨君が相当荒れてるって言ってたから久谷さんと喧嘩でもして機嫌が悪いのかもしれない。
…尚更心配になってきた。
「あっ…望月!!」
後ろから茨君の声がするけれど、今はそれ所じゃなかった。
喧嘩の原因は私かもしれない。
郁が今は“特別な関係”という均衡を私が崩したから機嫌が悪い可能性もある。


