恋の施し




「――…あのバカ。絶対誤解だから、今から郁に会って話してきなさい」




雪音は私の今までの話を聞いていなかったのかとでも言うようにケロリとそんな事を口にした。




「えぇぇぇぇえ!?
ってか、な、何で!?誤解なんて確証ないでしょ!?」




「ある。いいから行け」





ひぃぃぃぃぃい!!

なんだか雪音が男前な口調になってるんですけど!!



でも、今回だけは譲れないんだ。


今回こそは私が郁の幸せのために道化になって祝福する番なんだから。





「これだけは雪音の頼みでも聞けない!
絶対郁には話さない!」




「はぁ――…この頑固者」




頑固者で結構だ。

開き直った人間は強いのだから。

やっと恩を返せる時なのだから。




「聞いてくれてありがとう。おかげで気持ちが晴れた。
じゃあ、先に教室戻るから」




そして私は駆け出した。




「郁が響花を………ないのに………」




雪音の囁きは私の耳には届かなかった。