恋の施し



「ちょっと!聞いてる!?」



あっといけない。
思わず回想にふけってしまった。


ハッとすると目の前の人が私を無表情でジッと見つめている。…その表情は何を考えているのか読めないから苦手だ。

なんだかお互いに沈黙という微妙なムードになってしまった。



「ごめんなさい。え…と…」




とりあえず私は謝って相手の気をさらに逆立てないよう努めるが、次に繋がる上手い言葉が見当たらない。

えーと、こういう時は何を言えば良いんだっけ…





「私の名前は久谷(クタニ)愛だよ」





彼女にピッタリな可愛い名前…



私の言葉が続かない事に彼女が気を利かしてくれたのか、先ほどのムードがウソのように彼女はニッコリと見つめ微笑んできた。…やっぱりこの人イマイチキャラが掴めない…けどその笑顔は非がつけようがないぐらい完璧だった。


私は今、久谷さんとは話したくないという自分の醜い感情に取りつかれる。

何だか彼女と話したら、自分の聞きたくない事を聞かされる気がするんだ。…郁の事が頭から離れない。