「…郁、ありがとう」




やっぱり郁は郁だった。
今も昔も変わらない。


乱暴で、いい加減な所もあるけれど、とっても優しい人なんだ。





「あ、そうだ。
そう言えば……あのさ、もうアイツはいいわけ?」




「アイツって…楓の事…?

んー…どうなんだろうね」



「はぁ!?」




「いや、失礼だけど今思い返してみると、郁と居る方がいつの間にか嬉しくなってた」




緊張とか照れとかそんな理由があったのかもしれないけど。

楓と居るとき、郁の事を考えてた。郁の悲しい表情ばかりがちらついていた。


確かに楓の笑顔を見ると安心できて心が落ち着いて温かくなった。

けど、郁のあの、デートの時の笑顔は私の心の中で見慣れたはずなのにずっと光ってて。全然忘れられなくて。




―――恋愛相談の目的がいつの間にか自分の中で変わっていた。





「……もう良いか?」




自分で聞いておきながら郁が待ち遠しくて我慢できないという感じで先ほどと同じ質問を繰り返す。




「………ハイ」




その瞬間、私はまたもや郁にキスされた。