「待ってろ。今お茶を…」



そう言って台所へ向かおうとする郁の手を掴み、引き止める。




「いらない。…それより私の話、先に聞いて欲しい」




あまりズルズル引っ張っると私の性格上言えない気がする。いや、絶対言えなくなる。



「分かったよ」と郁が答えたのを確認してから、私達は結局場所を変えて郁の部屋で床に向かい合う形で座っていた。

リビングはなんか広すぎて落ち着かないからだ。






そして郁は私が話すまで待つといった態度をとっている。

…何故かそれがひどく私の心を掻き立てる。郁も少し緊張しているようなそんな表情を浮かべているから。


漸く私は、ゆっくり深呼吸してずっと伝えたかった事を言った。




「私、郁のことが好き」




「……知ってるよ。俺も好きだから」





だけど、やっぱり返答は分かり切っていたはずの答えで。


嬉しいけど、今は全然嬉しくなかった。



あぁ…やっぱり、郁は私のことを“家族的”意味で好いてくれているのだと嫌でも実感してしまうから。