秘密のキスをしたとしても。



「嫌だったら一階へ行くよ」


暗闇で顔は見えないけど、きっと私のことを気にしてそう言っているんだろう。


直ぐ人の事を考えてしまう性格。


お兄ちゃんはどうしてそんなに優しいの──?


…私がこの部屋に入って、気持ちを抑えられるという確証はない。


でも──。


「ううん!大丈夫。お兄ちゃんの部屋、お邪魔するね」


──自分の入りたい、という素直な気持ちには勝てなかった。


そう私が返事すると、お兄ちゃんはいつもの笑顔を見せたような気がした。