私の濡れた髪を拭いた後、お兄ちゃんはおやすみ、と静かに呟いて一階へ降りて行った。


微かにその場に残るお兄ちゃんの匂い。


ペタン、と冷たい床に座り込む。


…何でかな。


何で私達は────


────兄妹なの?


こうやって私生活を一緒に過ごせるのは家族の特権。


お兄ちゃんのことが好きな人達にとっては羨ましい立場に居るかもしれない。


でも…、それは思った以上に苦しいこと。



「…はは。何で、かな…」



苦しくて、辛くて──、でも逃げ出せなくて。


好きなのにこんなに苦しいよ…、ねぇ、お兄ちゃん。




**──床に座り込みながら静かに冷たい涙を流したのを


あなたは知らないでしょ──。

拭っても拭っても溢れ出る涙のことなんて──。