秘密のキスをしたとしても。



イチゴロールを奪った人はスタスタと人混みに紛れて行ってしまった。


凄い細身の男の人だった…。私よりも細いんじゃない?


なんて考えると何だか悔しくなり、私は何も買わず人混みから出る。


人混みを出ると嬉しそうにメロンパンとお茶を抱えた亜美が居た。


「あれ?花、何も買わなかったの?」


「…うん。ちょっとダイエットしようかなって今思った」


「えー!それ以上どこの肉を落とすのー!」


あはは、と笑いながら教室へ戻ろうとすると、どこからか聞き覚えのある名前を誰かが発した。


「隼人、ジャムパン好きかなー」


「うわ!抜け駆けせこいー!クラスの女子敵にまわすよー」


私達の横を通り過ぎた上級生の女の人二人の会話が耳に入る。


フと下を見ると、お兄ちゃんと同じ赤線が入った上靴。


それが三年生だという決めてと、“隼人” は私のお兄ちゃんのことを言っているってわかる。