八月、父が家を建てる。そんな情報が入った。五十歳でマイホーム。
だいたい理由がくだらないし、情けない。結局父はアルをどうすることもできなかったのだ。
さすが銀行員、意気地はなくても金はあるんだな、鼻で笑った。僕は家庭の経済状態について考えたことがなかった。金には困っていなかったので、貧乏ではないのだろう、その程度だった。しかしそんな貯金があったとは驚きだ。
臆病な父は夫婦別居、もしくは離婚の危機を新しい家を建てることで解決しようというのだ。祖母の家で生活することもそろそろ経済的にも厳しくなっていた母はそれに納得し、 また寄りを戻すことになった。
母は気持ちの切り替えが早い。少し前にあれだけ父を罵倒していたにも関らず、何事もなかったかのように振るまう。一度失敗した夫婦やカップルが寄りを戻すなんて愚の骨頂だ。一度うまくいかなかったことを、もう一度やり直しても未来は見えている。次も同じ原因で失敗するに決まっている。同じ失敗を繰り返すことを知りながら何故寄りを戻すのだろう。同じ失敗することに気付かないのか、いや違う。ただの保身だ。新しい道を歩むことに嫌悪、恐怖があるのだ。
保身のためなら家庭も捨てるし、またすぐに寄りを戻す。父も母も自己というものを持っていないに等しい。持っているのかもしれないが主張する術を知らないし、出来ない。自分から行動を起こすことなく、ただただ流れに身を任せている。僕が生まれる前も同じような人生だったのだろう。
アルはほったらかしだ。退院してそのまま家に一人残したままだ。あわよくば死んでくれないか、そんな両親の思惑が感じとられた。僕はぞっとした。
情けない生き方だ。父も母も人間として徳が低い。そのとき僕はソーリのいう通り一人暮らしをするまで生きてみようと思った。
だいたい理由がくだらないし、情けない。結局父はアルをどうすることもできなかったのだ。
さすが銀行員、意気地はなくても金はあるんだな、鼻で笑った。僕は家庭の経済状態について考えたことがなかった。金には困っていなかったので、貧乏ではないのだろう、その程度だった。しかしそんな貯金があったとは驚きだ。
臆病な父は夫婦別居、もしくは離婚の危機を新しい家を建てることで解決しようというのだ。祖母の家で生活することもそろそろ経済的にも厳しくなっていた母はそれに納得し、 また寄りを戻すことになった。
母は気持ちの切り替えが早い。少し前にあれだけ父を罵倒していたにも関らず、何事もなかったかのように振るまう。一度失敗した夫婦やカップルが寄りを戻すなんて愚の骨頂だ。一度うまくいかなかったことを、もう一度やり直しても未来は見えている。次も同じ原因で失敗するに決まっている。同じ失敗を繰り返すことを知りながら何故寄りを戻すのだろう。同じ失敗することに気付かないのか、いや違う。ただの保身だ。新しい道を歩むことに嫌悪、恐怖があるのだ。
保身のためなら家庭も捨てるし、またすぐに寄りを戻す。父も母も自己というものを持っていないに等しい。持っているのかもしれないが主張する術を知らないし、出来ない。自分から行動を起こすことなく、ただただ流れに身を任せている。僕が生まれる前も同じような人生だったのだろう。
アルはほったらかしだ。退院してそのまま家に一人残したままだ。あわよくば死んでくれないか、そんな両親の思惑が感じとられた。僕はぞっとした。
情けない生き方だ。父も母も人間として徳が低い。そのとき僕はソーリのいう通り一人暮らしをするまで生きてみようと思った。

