俺は大阪で生まれ、物心ついたときには
あの庭園と祖父母、可愛い秋華と優しい夏葵さん、
それに2人の両親の香織さんと圭隆(キヨタカ)さんに
すごく優しくされ育っていた。
親父は広島で仕事だったから母さんも広島に残ってて、
ずっと俺は大阪で育って、華道をじいちゃんとばあちゃんに教えてもらうつもりだった。
けど家業が嫌いな親父がそれを許すはずもなく、
まだ幼いうちにと、大阪から連れ戻されたんだ。
『俺、華道と花が好き。親父が継がねぇなら俺が継ぐ』
これは、俺の小さいときからの夢だった。
「…陽が華道、好きなことぐらい知っとうよ」
…んだよ、知ってたのか。
「母さんは反対じゃないけど、父さんは反対じゃろね」
『…母さん反対しねぇの?』
「陽の味方じゃけぇね♪」
『まじかよ。じゃあ俺、大阪戻っていいのか?』

