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『琴羽、醤油取って』

『ん』


まだ買ったばかりの“おにゅう”の洋服を汚さないように、私は机に置いてある醤油を手に取った。


『琴羽がかけてあげる』

『うわっいいって!!いやー!』


そして、明らかに二日酔いで気持ち悪そうな顔をしている父親の目玉焼きに、醤油をぶっ掛けた。

白いはずの卵の白身は醤油色に染まる。


『ちょっ!何してんの!辛くて食べれねぇじゃねぇか!』

『琴羽こしょう派だから醤油の加減よく分かんないや』

『今のわざとだよね!』

『いいから二人共食えやー!!』


母の怒号が聞こえて、慌ててご飯に箸をつける。


『あん?当麻はまだ寝てんの?』

『お兄ちゃん昨日ゲームしまくって今日起きれないんだってー』

『よし、一発殴ってこようかなお父さん』

『可哀想だよー』


私、黒音琴羽、11歳。
育ち盛りの小学5年生。

目の前に居るのは、父。中小会社に勤める、まずまずな親父。取り合えず酒が好き。



そして、