「どうしたの?急に」
「だって、気になるでしょ。無関係じゃないんだし」
カラス君の大きい手で頬を撫でられる。
「本当は、当麻君に会わす顔が無いんだ」
「・・・・・・うん」
前妻の子、当麻君とは義兄にあたる。
でも、生まれた時から殆ど一緒に居たし、普通の“お兄ちゃん”って感じだった。
変わったのは、中学からなんだ。
乱暴された時に、もっと抵抗してれば良かった。
次から次へと許すから、今こんな後悔してるんだ。
「俺は、お兄さんの事はどうでもいいんだけどね」
「え?」
いつも優しいイメージのカラス君から意外な一言に拍子抜けした。
「黒猫さんが、最近、あの日を境に元気ないから」
熱い手が頭を優しく撫でてくれている。
「私、元気ない?」
「うん。ない。」
「全然いつも通りだと思ってた」
カラス君は小さく笑った。
「“いつも通り”って自分じゃ気付かないんだよ」
何かを捕らえられた気がした。
(いつも通り、自分じゃ気付かない?)
「普段自分が同じ様な事をしてても、他の人から見ればちょっと違う時もある」
ね?
とカラス君は甘く笑った。

