カラス君と黒猫さん2





「ただいまー」


部屋に帰って、靴を脱ぐ。
物音はしない。


(寝てるのかな)


足音を立てないようにそーっと歩き、ベッドがある部屋のドアを開ける。


まだ買ったばかりの新しいベッドの上に、カラス君は蹲っていた。
はだけたシャツが、汗ばんだ肌をより、色っぽくしてる。


(爪立てたい)

なんて野蛮な考えは捨てて。


ぐっすり眠るカラス君の頬を指で突いた。


「カラス君」


少し眉を寄せ、うっすらと黒い瞳は開く。


「・・・・・・ん、・・・黒猫さん、?」

「おはよう。お粥作るけど、食べられる?」

「・・・・・・・・・・・・」


目を開けたカラス君は無言だった。

あれ、聞こえて無かったかな。


「・・・黒猫さんの手作り?」

「そうだけど」

「食べるよ」

「・・・・・・食欲無さそうな顔してるんだけど」

「だって黒猫さんの手作り料理なんて滅多に食べられないじゃん」


ぐさ、と何かが突き刺さる。


そうだ。

カラス君のお手製料理を食べてばっかで作ってないや。
最近面倒臭いから買ってきたものしか食べてないし。