「ただいまー」
部屋に帰って、靴を脱ぐ。
物音はしない。
(寝てるのかな)
足音を立てないようにそーっと歩き、ベッドがある部屋のドアを開ける。
まだ買ったばかりの新しいベッドの上に、カラス君は蹲っていた。
はだけたシャツが、汗ばんだ肌をより、色っぽくしてる。
(爪立てたい)
なんて野蛮な考えは捨てて。
ぐっすり眠るカラス君の頬を指で突いた。
「カラス君」
少し眉を寄せ、うっすらと黒い瞳は開く。
「・・・・・・ん、・・・黒猫さん、?」
「おはよう。お粥作るけど、食べられる?」
「・・・・・・・・・・・・」
目を開けたカラス君は無言だった。
あれ、聞こえて無かったかな。
「・・・黒猫さんの手作り?」
「そうだけど」
「食べるよ」
「・・・・・・食欲無さそうな顔してるんだけど」
「だって黒猫さんの手作り料理なんて滅多に食べられないじゃん」
ぐさ、と何かが突き刺さる。
そうだ。
カラス君のお手製料理を食べてばっかで作ってないや。
最近面倒臭いから買ってきたものしか食べてないし。

