「あん?琴羽?」
近所のスーパー。
そこで私は聞き慣れた声を耳に入れた。
「・・・母さん?」
「あー、やっぱり琴羽じゃない!あんた学校は?」
「・・・・・・・・・早退。みたいな?」
「みたいな?じゃないわよ馬鹿娘が!!」
昼頃の、野菜売り場。
そこに派手な母さんは居た。
真っ赤なシャツに、決して地味ではないコート。シンプルなパンツに、エナメル質なバッグ、ヒールが高いブーツ。
「・・・・・・夜の顔の母さんがどうしてここに?寝てるのかと思ってた」
「あぁ。今日ね、仕事休みなの。あんたこそ基本バイト尽くめだったのに、何で昼頃居るのよ。学校までサボって」
「カラス君の看病。今日学校で熱出してさぁ。カラス君意識なくなるし、結局連れてきたのは私の部屋」
少し母さんは怪訝そうな顔をして、溜め息をついた。
「あんた本っ当カラス君に夢中ねー」
「いやーそれ程でも」
「褒めてないわよ」
母さんは目の前のブロッコリーを籠に入れた。
ブロッコリー。うん、カラス君はまだ食べれそうに無いや。
あぁそうだ。
スーパーに来たのは買出しの為だった。
家にカラス君が食べられそうなものあんまり無いからなぁ。

